付:手話言語条例 

 県内に「手話は言語である」という認識に基づき、手話の理解と普及の促進、ろう者が手話を使いやすい環境づくりを進める「市川三郷町手話言語条例」「上野原市手話言語条例」を制定しました。次のリンクをご参照ください。

上野原市手話言語条例  👈クリック

市川三郷町手話言語条例     👈クリック

④鳥取県手話言語条例の力 鳥取県知事 平井伸治

⑤「手話言語」の使用について(全日本ろうあ連盟)  

 2017年3月理事会にて審議の結果、手話は言語であることを考慮し、連盟は今後「手話言語」と言い表します。なお、日本で使用する「手話言語」を「日本手話言語」または「日本手話語」とすることについては継続討議とします。

【使用のポイント】翻訳する場合、英語の「Sign Language」を今後「手話言語」、英語の「Sign」は「手話」とします。この場合の「手話」は「音声言語」の「音声」と対比する使い方とします。

・Sign Language(サイン・ランゲージ) = 手話言語

例)Japanese Sign Language :日本手話言語  British Sign Language:イギリス手話言語

  American Sign Language = アメリカ手話言語  Sign(サイン) = 手話

 また、巷(ちまた)で使われている「日本語対応手話」を日本語のコミュニケーション手段として用いる、という意味で「日本語の手話」とします。

◎言語: 音声言語→音声語   手話言語→手話語

◎言語学:音声言語学(人間が使用する音声言語の構造や意味を科学的に研究する学問)

     音声学(人間の音声言語の音声を研究する学問)

     手話言語学(人間が使用する手話言語の構造や意味を科学的に研究する学問)    

     手話学(人間の手話言語の手話を研究する学問)

【理由】日本で使用する「手話」は、言語の意味で使用する場合と、言語の手段として使用(表出)するのと混在して使われています。韓国手話言語法は「韓国手話言語」を略して「韓国手語」を使用することを法により決定しました。また国内でも北海道石狩市の高校では「手話語」を使用する動きが出ています。

 世界で使用されている日本語の「手話」に相当する言葉には必ず「言語(語)」がついており、「身振り」と「語」が結合したような言葉を作り出している状況にあり、「言語」または「語」の意味がつかない使い方をしているのは、おそらく日本だけのようです。

 わが国でも言語としての認識をもって使用することが望ましいため、「(日本)手話言語」(「日本手話語(手話語)」)のように言語の地位を付与することが必要だと考えます。

 なお、2016年に朝日新聞の「日本手話」と「日本語対応手話」に関する問い合わせに対しては以下のように回答しています。

<回答>手話を分類化する考えは、障害のない人を基準とする見方であり、日本語という音声言語の視点で手話を分類化するのは科学としての言語学の考えからして馴染まないものであります。日本語という社会の中で優位に立つ音声言語の影響を受けながら、手話の世界で見られる事に対する様々な現象への単純な分類の仕方は、手話使用者への類型化に繋がりやすい面がある事を考慮する必要があります。

 さらに、日本財団理事長は、同様の質問に対して、「日本語の世界でも、外国人が文法的におかしな日本語をしゃべることがあるが、これも日本語である。手話の世界でも同様である。手話言語法は手話とは何かを決めるものではない、手話を使う環境の整備を求めるものである。」と回答しています。

<参考①:2016年度手話言語法海外調査結果>

(1)ベルギー:アダム・コーシャ欧州議会議員へのインタビューにおいて、手話言語(Sign Language)と手話(Sign)を明確に使い分けていることがわかりました。

例)国際手話(International Sign)は言語を意味する「Language」をつけることがなく「言語」として位置づけされていない状況にあることを確認しました。

(2)韓国:国立国語院でのインタビューにおいて、韓国では「手話言語=Sign Language」から手話を言語として認め、「手話言語」の「手」と「語」をとって「手語」としたことがわかりました。これらは聴覚障害をもつ当事者団体からの要望ではなく、行政の判断により決められたものです。

【総括】『日本において「Sign Language=手話」では「言語」の意味合いが欠如しており、本来は「手話言語」としたほうがよい』との見解に至りました。

<「手話言語」に関する見解>

1.はじめに

 「手話言語」に関する見解は、手話言語、そして手話言語を使用するろう者等への正しい理解を広めることを目的としています。手話言語を分けることでろう者や手話通訳者等を分断することはあってはならないことであり、私たちは「手話言語法」の早期制定と、ろう者等の権利を守り、真の社会参加を推進することを改めて明確に表明するものです。

2.「手話言語」とは

 「手話言語」は手の形、位置、動きをもとに、表情も活用する独自の文法体系をもった、音声言語と対等な言語です。障害者権利条約の定義に手話が「言語」として位置づけられ、日本においても改正障害者基本法で初めて「言語(手話を含む)」と明記されたことで手話が言語として法的に認知されました。

3.「日本手話」と「日本語対応手話」

 手話への認知が広がるにつれ、近年、手話を「日本手話」、「日本語対応手話」と分ける考え方を提唱する動きが随所でみられるようになりました。手話を言語として位置付け使用していくためには言語学的な研究の確立が急務です。同時に忘れてはならないことは、私たちろう者や聞こえにくい人には、聴力を失った年齢、生まれ育った環境、手話を獲得・習得した年齢など、実に様々な背景があることです。子どもの頃から手話でコミュニケーションのとれる環境(ろう学校や家庭など)にいた人もいれば、中学校や高校、大学、もしくは成人してからろう者の仲間や手話に出会い、手話を学び、手話を身につけた人もいます。このような様々な背景によりろう者が育んできた手話を流ちょうに使う人もいれば、手話をスムーズに使うことができず日本語に手話単語を合わせて使う人もいます。更には仲間同士に対して、あるいは手話の読み取りが苦手な聞こえる人に対して、使う手話を無意識に使い分けている人も多くいます。

4.「手話」は私たちろう者の生きる力

 手話はかつて、長いろう教育の歴史の中でその使用が厳しく禁止されてきました。それはろう児を「聞こえる人と同じように」育てるために教育をするという方針が背景にありました。そして学校だけでなく社会においても手話は「手真似(てまね)」と蔑まれ、ろう者は言われのない差別や人権侵害を受けてきました。しかしそうした差別や苦境に屈することなく、ろう児・者は仲間の中で手話を守り、育んできました。そして自ら差別とたたかい、ろう者自身の権利を守り社会参加を果たしていく集団、組織に発展させてきました。そしてその過程で、聞こえる人へもろう者のこと、そして手話への理解を広め、手話のできる聞こえる人の中から手話通訳者を育て、手話通訳の制度化に結びつけました。

 大切なことは、「手話」が私たちろう者が自らの道を切り拓いてきた「生きる力」そのものであり、「命」であることです。その手話を「日本手話」、「日本語対応手話」と分け、そのことにより聞こえない人や聞こえにくい人、手話通訳者を含めた聞こえる人を分け隔てることがあってはなりません。手話を第一言語として生活しているろう者、手話を獲得・習得しようとしている聞こえない人や聞こえにくい人、手話を使う聞こえる人など、それぞれが使う手話は様々ですが、まず、それら全てが手話であり、音声言語である日本語と同じように一つの言語であることを共通理解としていきましょう。

5.手話から「手話言語」へ ~「手話言語法」制定に向けて

 私たちは「手話言語を獲得する」「手話言語を学ぶ」「手話言語で学ぶ」「手話言語を使う」「手話言語を守る」といった5つの権利を保障するために「手話言語法」の早期制定を求めて2010年から全国の仲間と共に運動を進めてきました。その中で海外の動向などもふまえて、私たちはコミュニケーション手段としての「手話」があり、そして聞こえる人が言語として日本語を獲得するように、聞こえない人が獲得・習得する言語は「手話言語」であると考えました。

 折しも2017年に国連において9月23日を「手話言語の国際デー」とする決議が採択され、この記念すべき日が啓発されることにより、世界的にろう児・者と「手話言語」への認識と理解がより一層深まることは間違いありません。こうした社会情勢の変化や手話言語に関する国内外の動向をふまえ、私たちは言語としての手話を「手話言語」として普及していきます。

 手話言語は音声言語である日本語と対等な一つの言語です。その認識を正しく市民に啓発し、「手話言語法」を一日も早く制定するよう、全国の仲間と共に一丸となって取り組む所存です。

                     2018年6月19日 一般財団法人全日本ろうあ連盟

2015.10.1に施行された市川三郷町手話言語条例を考える

             ~なぜ手話言語条例を求めたか?~

 皆さん 街の中、ろう者が手話で対話する姿を見れば、手ぶり?があればお互いにわかるだろう、また聞こえない人と話すときは紙に書いて出せばいいと思う人が多くいます。手話を学んだ人も、ろう者と会うと必ず手話を使いますね。手話はろう者が使うもので、手話通訳のコミュニケーション手段についても市民の理解が広がっています。

 2006年、障害者権利条約で「手話は言語」と位置づけされてから、「手話言語法」の制定を求める意見書が全国1788の地方議会すべてで採択され、「手話を広める知事の会」には全47都道府県知事が参加しています。国で「手話言語法」が制定されれば、次に自分の地域の「手話言語条例」を取り組みたいという国の動きを見てからと考える県や市もありますが、独自の条例を定めた県市町が301か所あります。全国で続々と制定していることから社会全体が「手話は言語」と認めていると言ってもいいかと思います。

 これからも山梨の地域で県・市町村条例が制定されていくと思いますが、条例は手話を普及するものと思い込む人が多くいます。手話を普及するなら手話言語条例でなく手話普及条例でもいいではないか?と傾げる人もいます。また、当協会が多く実施している手話言語フォーラム開催等、「なぜ手話は言語にこだわるのか?」と思う人が多くいると思います。なぜ「手話言語条例」なのかというあたりをきちんとしっかり認識することが大切です。

 つまり、手話言語条例は「手話そのものが差別の対象」だったからです。「手話通訳者を呼ばなくても、手話がなくても通じます」と言う企業が多くあります。仕事の簡単なメモとか連絡であれば大丈夫だと判断されています。しかし、人はたくさんの情報とコミュニケーションの中で、必要な知識を取捨選択しながら成長します。手話通訳者の活用で彼らの力をもっと伸ばしていくことは、本人だけではなく企業にとってのメリットにもなり、社会の発展にもつながります。まず手話を身近に知ってもらうことが不可欠です。

 それは手話そのものを理解していないことです。「正しく理解をしていない、正当な評価をしていない」ことからろう者に対する差別や偏見が生まれます。手話のさらなる地位向上が、ろう者の手話利用者への差別への解消につながることになるのです。

 教育の場でも、地域の普通学校に通う難聴児が増えており、手話を知らないまま社会に入ってくると、聞こえる人の会話の中にも入れない状態になります。普通学校の中で「みんなで手話を学ぶ」、こんな社会になればもっと豊かに暮らせることでしょう。

 今でも手話をしているとジロジロ見られています。昔、手話は日本の教育現場で戦前は「手まね」などと言われて使用を禁じられ、戦後も口話教育優先で、ろう者は、健常者の口の動きで内容を読み取り、同様に発声できるよう教育されたという長い歴史がありました。その中、「友達と手話をしていても、人がくれば隠していた。」等手話を人前で堂々とできる時代ではなかったのです。ろう者(手話利用者)は圧倒的に少数であるが、ゆえに様々な不便と偏見の対象となっていました。

 「単なる孤立だけでなく、社会的地位の低さなどから、その人格、能力など正しく評価されず、見下げられ、はれもの扱いされたりする差別的な孤立」「社会に出たら手話は通じない・・・」等多くの問題がありました。全国の同じろう者仲間が、そういう状況を打破するため、長い運動をしてこられた結果、2006年に国連採択の障害者権利条約で手話は独立した体系を持つ「言語」として位置づけられ、日本も11年に改正障害者基本法を施行し、初めて言語として明文化しました。

 こうした国の動きを受け、各地で可決されている同条例も手話を言語ととらえ、自治体の責務として、手話を使いやすい環境整備やその学習推進を掲げています。

 手話言語条例はどういった内容なの?というと、手話を法的に「言語」と位置づける条例です。「手話の普及に関し、自治体及び住民の責務及び役割を明らか」にするとともに、「ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現すること」などを目的としています。何が変わるの?というと、「手話を獲得する」、「手話を学ぶ」、「手話で学ぶ」、「手話を使う」、「手話を守る」この5つの権利をもとに、手話での生活が大きく改善されるでしょう。

 例えば、「国語」「英語」「手話」の様に言語としてのカリキュラムが組まれるなど、ろう者と聴者の間にあるコミュニケーションの壁が取り払われることが期待されています。つまり、日本語であれ、英語であれ、手話であれ、言語としての優劣はなく同等なのです。それぞれの言語に優劣がなく同等なのですから、それを使っている者にも優劣はありません。つまり「差別の対象にはなりえない」ということになります。私たちは何語であれ、使っている言語によってその者に対し優劣をつけ差別をすることは出来ないのです。

 手話は日本語を手で表したものだと思っている人も多いかもしれませんが、日本語とは全く違う文法や単語を持つ、独立した言語です。手話は手だけを使うのではありません。体の動きや眉の動き、表情、口の動き、頷きなどを組み合わせて使う言語です。例えば、「働く」という手話は、表情、体の動きなどを変えることによって「一生懸命働く」、「適当に働く」、「楽しく働く」と意味が変わってきます。手話は世界共通ではありません。世界で現存する手話は126種あるといわれています。国ごとの違いだけでなく、地域ごとに異なる手話の方言もあります。

 ろう文化では、手話が母語で日本語が第二言語になります。つまり手話で暮らす人たちは、手話で考えたり、寝言を手話で言ったりするのです。ろう文化は視覚から得る情報でコミュニケーションを図ります。例えば、日常生活では、電話ではなくビデオチャットを使ったり、拍手は手を上にあげてひらひらさせます。音を可視化する方法の一つとして、インターホンの音や赤ちゃんの泣き声など、音に反応するライトや機器を家や職場に設置して利用することもあります。

 条例を制定しても、啓発チラシの発行や啓発イベントなど、一過性の活動で終わる例もありますが、ろう協会などは、手話を言語として学び、使っていく環境整備をより強力に進められる必要があります。手話ができれば誰でもできるの?でなく、英語通訳の状況と同じで、情報を正確に伝える必要があります。そのため、手話ができることに加えて、手話通訳に必要な技術の習得やろう文化への理解が不可欠です。

 政見放送や裁判などの通訳も担当できる厚生労働大臣認定の「手話通訳士」があります。その他には、都道府県認定の「手話通訳者」や市区町村における「手話奉仕員」があります。公共機関、教育機関、医療機関、交通機関、職場などろう者の生活に関わる様々な場面で手話通訳が必要とされます。日常会話、講演、講義、社内会議など、簡単なコミュニケーションから専門用語の飛び交う会議まで多岐にわたります。聞こえる人の音声言語と同じくろう者の手話を多く使う環境を目指す必要があります。

<「手話言語条例」が単独の条例として必要である理由>

◎ 県条例の場合は、 手話通訳者・指導者の養成、ろう学校における手話言語教育の推進、及び県立の学校等での手話学習の推進、手話言語の保存・調査・研究などが主なポイントとなります。特に「手話の獲得」「手話の習得」の面でろう学校での手話言語教育の推進を強化するためには「手話言語条例」の条文に盛り込み、具体的な施策を進めていく必要があると考えます。以上の二点を言語施策として保障して初めて、ろう者を含む障害者の情報・コミュニケーション保障が成り立つことを理解する必要があります。

◎これを折衷案として手話言語と情報・コミュニケーションをーつにまとめた条例を検討するところが見られますが、情報やコミュニケーション手段の機会確保に偏りがちとなり、多様な言語環境の整備の視点が欠けることになります。それぞれの特性を活かすためには、言語施策としての「手話言語条例」及び障害者支援施策としての「(ろう者を含めた)情報・コミュニケーション条例」の2本立てでの制定が望ましいと考えます。

◎市区町村条例の場合は、市区町村民への理解と普及が中心となります。ろう者に関わる公的機関をはじめ、企業、町内会などの住民、地域の小学校・中学校などへの手話普及、また手話通訳者の配置など手話による意思疎通支援等の施策推進が大きなポイントとなります。 

◎地域の実情に応じての施策の策定が基本となりますが、乳幼児施策において、乳児が聞こえないと分かった際の「手話教育(療育)」を含めた適切かつ平等な情報提供、乳児の保護者への手話習得支援及び手話言語教育に関する施策を行うためには、「手話言語条例」が必要です。

◎手話言語習得、手話言語獲得、保護者の手話言語習得、保護者への情報提供等が単独の手話言語条例を制定する大きな要因となり、コミュニケーション手段等の確保をメインとする情報・コミュニケーション条例と大きく異なるところです。

◎多様な言語環境を整備することを目的とする手話言語条例と、多様なコミュニケーションが使用でき、あらゆる情報に容易にアクセスできる環境整備との違いを、行政等に理解していただくことが大切です。

理論:手話の複権