情報提供施設運動 の道程                                                                (県立聴覚障害者情報センター)

       山梨県聴覚障害者情報提供施設建設運動に取り組んで(情報提供施設への道程)

 当時の山梨のろう運動で活躍されました。4年間という長時間の交渉を記録としてまとめ、当時の背景、経過を紹介しました。この記録は当時に語ったもので、現在の在り方と違うところもありますが、ろう者の人間性については今でも考え方が変わっていません。ご了承ください。

 皆さん、ご存じと思いますが、山梨県聴覚障害者協会は情報提供施設建設問題を抱えて、1994年~1997年の長い4年間、県としいやり取りを続けていました。つまり行政側と話し合いを持ちましたが、その期待は裏切られてしまいました。県から出された情報提供施設の内容は私たちの求めていたものとはかけはなれたものでした。

 この施設は1997年4月オープンされましたが、職員身分保障、施設機能の在り方、備品などいろいろと話し合いに詰める問題も残されており、今でもまだまだ予断を許しません。

 情報提供施設は、ろう協会の4年間の苦しい活動の中で、長年待ち望み、まさに聴覚障害者の福祉の拠点となり得る施設であります。この情報提供施設が、真に聴覚障害者の望む施設になるか否かで、今度の山梨のろう運動に大きな影響を与えるものと思われました。長い運動の中、ろう協会だけでなく、手話サークル、全通研から積極的な協力を頂いていました。

 ここで、4年間の情報提供施設建設運動について説明いたします。

内容は       1.運動の始まりから大きな運動に変わった経過        2.行政側の最初計画     3.ろう協会の要望

4.県との主な争点・最終的決定内容    5.法的施設の意義    6.情報提供施設運動を見て                                                                                                                                                                                                        の6つに分けて説明いたします。

1.運動の始まり

 ろうあ会館は地域により、ろうあセンター他の呼び方は様々でしたが、聴覚障害者の福祉の中核をなすものとして全国的な要求運動が行われ、それが1991年の平成3年に大きな前進を見ることになった。それは1991年の平成3年の身体障害者福祉法33条改正により、正式には『視聴覚障害者情報提供施設』の名称で、更生援護施設のひとつとして、法律的に位置付けられたからです。このような法的根拠ができたことを受け、山梨のろう協会も施設の早期建設に向けて、プロジェクトチームの活動を始めた。あの時はまだ大きな運動になっていないし、のんびりと計画していこうと思っていた。

 一方、1992年の平成4年、新しい県知事が誕生し、全国に先立ち、アメリカのADA法を習うような「山梨県身体障害者幸住条例」が提唱された。その後検討委員会での審議を経て、1993年の平成5年10月正式に公布された。その前に、この条例の提唱を受けた時、民間委託の検討委員会で各障害者団体を招集して意見、要望を集めたが、最終案にろう協会の要望の「情報提供施設建設」を記載されなかった。

 1993年の平成5年、再度、施設の必要性を求める為、1993年の平成5年5月から4か月間に県民17500名の署名運動を行い、 10月、県知事に陳情した。その結果は情報提供施設が具体的な形となり、大きな運動に変った。

2.行政側の最初計画

 1994年の平成6年2月、ろう協会と確認しないままに、情報提供施設を含む総合福祉プラザ建設構想が突然発表された。あわてて、翌日ろう協会の理事を集めて県庁へ駆け付けた。発表担当だった総務厚生課に内容を確認したら間違いなく計画していて本当に驚いた。情報提供施設は独立した建物ではなく、併設するという形での建設が実現されるとのことで、既存の社会参加促進センターと合築の複合施設とする案を出された。面積は220㎡で、社会参加促進センターに設置して、その職員が兼職する考えがあった。その時、ろう協会の強い抗議で社会参加促進センターと合築計画は中止し、新規の身体障害者福祉協会に運営主体を委託、又その設備は社会促進センターと共同使用する案に変った。
 社会参加促進センターは任意施設で、情報提供施設は法的施設になるので、性格は全く違う。そのセンターは身体障害者連合会の元にやってほしいと反発した。そういう意味で、県から出された情報提供施設の内容は私たちの求めていたものとはかけはなれたものでした。つまり他の障害者団体が使う情報提供の設備も置き、ビデオライブラリー業務のみで、他の業務を備えないという考えが強いでした。

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(回答文書)1994年の平成6年5月16日

山梨県厚生部障害福祉課 課長〇〇〇〇殿  山梨県身体障害者団体連絡協議会 会長〇〇〇〇殿

5月12日の山身協理事会において話し合われ九情報提供施設について回答致します。

1,社会参加促進センターとの合築は納得出来ません。2,法人については、山聴協の要望に沿った情報提供施設が建設された場合には法人化を進めて下さい。

 山聴協の要望する情報提供施設でなければ、今回の計画は中止、延期にして下さい。この計画は社会参加促進センターのみの計画で進めて下さい。

(理由)

 情報提供施設は聴覚障害者の福祉の中核をなすものとして、全国的な要求運動が行われ、それが1993年の平成3年の身体障害者福祉法第33条の法制化へと結び付きました。それを受けて、私たち聴覚障害者協会は、 17,500名の署名活動を行い、情報提供施設早期実現に向けて運動してきました。その結果、情報提供施設が具体的な形となりました。しかし県から出されている情報提供施設の内容は私たちの求めていたものとはかけはなれたものでした。

 社会参加促進センターの存在は尊重するものの、私たちはあくまでも情報提供施設が単独施設として建設されることを望みます。ついては、今回建設が実現されなくても、私たちは真に望む情報提供施設の実現に向けて地道な活動を続けてゆきます。

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3.ろう協会の要望

 細かく話さなくても分かると思うが、全国的に同じ考え方で、ろう協会を主体とする新規法人一山梨の場合、社会福祉法人として運営する考えがあったが、突然の計画のため、時間関係と協会体制の都合で運営主体を社会福祉事業団に委託すると方針を決めた。

 山梨には聴覚障害者の為の施設が無いので、単独施設が必要。この施設はライブラリー業務、ビデオ制作業務、派遣業務、相談業務等厚生省の建設基準通り十分な設備を備える。特に運営を遂行する為、人的な充実が必要、十分な施設機能が必要を強く申し入れた。しかし、その後施設はだれのための施設か、施設の意昧を中心にして激しい理論的討論に変った。

4.県との主な争点・最終的決定内容

①『視覚、肢体、精神障害団体合同の新規法人身体障害者福祉協会に運営を委託する問題

視覚、肢体、精神障害と合同で、新規法人を作って、その施設運営に障害者全体のバランスをとる必要があるので、身体障害者福祉協会に任せたらどうかと強く要望された。

 私たちにとっては、障害者団体は基本的には認識が共通しているが、利害関係が対立する場合も少なくない現状がある。

 例えば1つの建物でも車椅子の人は廊下の広い方が便利、視覚障害者はあまり広い廊下は不安で歩きにくい、廊下の真ん中に点ブロックがあると、松葉づえの人は滑って歩きにくい。

 身体障害者の運動会を見てもらっても分かるように、ろう者と視覚障害者は一緒に走れない。目指すところは同じでも、具体的方法は違います。他の障害者がその施設のどこを使うか、使うところが少ないと返事した。

情報提供施設は聴覚障害者のためであるのに、質的活動が違う、つまり目標は同じでも、歩む道が違う団体が運営をやることは納得できない。しっかりとした組織のある中立的な団体、つまり事業団に運営をしてもらう方向の方が妥当である。

②『県内聴覚障害者3000人中、10%以下の協会会員の中、270人の為の施設ではないという考え方の問題』

県内聴覚障害者3000人中、10%以下の協会会員の中、270人の為の施設ではないと言った県の考えに対しては、老人性難聴、中途失聴、ろうあ者のそれぞれニーズも活動も心も違う。中途失聴はろうあ者でないプライトで交わることは難しい。

本当に情報が欲しい、その運動が必要なのはろうあ者である。一人の命の重さと3000人の命の重さは比較出来ない、どちらも大切です。

単純に数を比較することは現在の福祉の考えに則していない。よく聞いていると思うが、介護保険制度について、それが必要な障害者は10万人いるが、まずそれを必要としている2万人の老齢者を対象としてやることを検討している。

数の比較をするならば県民より障害者の方が少ないのだから、障害者幸住条例そのものに意味がなくなる。

③『身体障害者相談員があるので、ろうあ者相談員設置は認めない問題』

身体障害者相談員があるので、ろうあ者相談員設置の必要はない。沢山の相談があったといっても、報告がないので認められなかった。

身体障害者相談員はいわば、アマチュアであり、年にたった2時間のみ、研修を受けているだけです。本当に悩みを持っている人はどの様な人間に相談するのかというと、広い福祉知識、経験、見識、守る義務、人格いわばプロとして信頼の出来る人間に相談するのが当然です。

④『ビデオ制作設備を配備しない。民間の制作会社にビデオ制作を依頼する方法についての問題』

 ビデオ制作設備を配備しない問題については、聴覚障害者の二ーズを把握するというのは、聴覚障害者に対する理解が深くなくては出来ないものですので、民間の制作会社にビデオ制作を依頼しても、聴覚障害者の必要なビデオが充実できるとは思えない。

⑤『ノーマライゼーションの理念の食い違いについて』

 ノーマライゼーションの理念からバランスを取ればいいという県の考えに対すると、聴覚障害者の施設は1つもないので、そのバランスがとれているとは言えない。点字図書館、点字出版物は山梨ライトハウスという素晴らしい建物がある。県内に聴覚障害者の為の施設はない。

 あさひワークホーム、梨の木寮は県立で建てられている。士地も県の物です。しかし運営は独自の身体障害者援護協会、手をつなぐ親の会がやっている。

 認めないというのは信用されない団体と見做して判断することは大変残念です。ろう協会は70年にも及ぶ歴史があって、県の委託事業、他の事業も多く実施している。聞こえないからという理由で出来ないことはない。

⑥『机上プランで内容の食い違い問題』

 情報提供施設の内容の充実を求めたが、県が他県の視察にも行かないで、机上のプランを中心にした為、大きく食い違った。ろう協会の声を聞くという姿勢が無いどころか、その不勉強さには呆れるばかりでした。とにかく他県の状況をその目で見て来る必要があり、その上で、ろう協会が無理のことを言っているのかわかってほしいとお願いしたが、なかなか実施してくれない。

⑦『行政側の発言問題』

 障害福祉課は、県が作った構想を堅持するばかりで、聴覚障害者が意見や希望を述べるなら

「話し合いをする余地のない団体だ」自己満足」「ろう協会は子供と同然だ」「精神障害者はーつも文句が言わないので可愛い、ろう協会は可愛くない「ろう協会だけの施設にすると他の障害者団体がかわいそう、わがまま団体だ」「県が作るのが気に入らないなら、自分で士地を買って作ればいい」等と誹誘に及ぶ発言の問題が出た。

 私が「県の行政に一生懸命に協力をしてあげたのに、今、よくも侮辱な言い方で言えましたね。今までの話し合いを白紙にします。もう一度聴覚障害者問題を勉強しろ」と話し合いを打ち切った。その後身体障害者福祉協会の理事会で勝手に採択する恐れがあるので、直ちに団体加入辞退を申し入れた。

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(通知文書)平成7年4月26日

山梨県身体障害者連絡協議会会長 〇〇〇〇殿

           山梨県身体障害者連絡協議会脱退届について(通知)

 前略取り急ぎ申し上げます。さて、先週県障害福祉課長の話がありました社会福祉法人山梨県障害者福祉協会の構成団体について、当協会の緊急理事会で協議致した結果、貴協議会からの脱退が決議されました。

 この決議に従い、当協会は4月28日をもって山梨県身体障害者連絡協議会を脱退いたします。

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 県側が慌てて知事指示で、私の会社まで厚生部長が会いたいとしつこく申し入れがあった。仕方がなく自宅で行うことになって、県の代理者がメロン2個を持ってきた。県の厚生部長代理の次長が「紳士的、建設的話し合いを約束する。」と協力を求められて、初めて知事秘書、厚生部長、総務、障害福祉関係者16人の大勢の前に改めて要望した。その後県で検討したが、まだ厚生省の方針にあっていない内容になっていた。

⑧『県の案を厚生省に出し九が、認められない。国の補助は諦めて県の単独予算に変更した問題』

 県の考えのままで国の補助金を貰えると言っていた為、厚生省の建設基準は知らないようで、どうもおかしいと思った。厚生省の採択条件の文書を見せたら、県がこの文書の内容を初めて見たようで、その気になって県が厚生省に県の計画を見せたが、これでは認められないと返事があった。

 話し合いを再開して、県が国の通達を充分熟知していなかったと反省のお詫びがあった。安心してこれで進めると思ったが、県の考えが変わって国に県の案を知られてしまったので、国の補助は諦めて県の単独予算でいくと出された為、再び激化した。

⑨『国が作った名称の扱い方の問題』

 山梨日日新聞に発表した「聴覚障害者情報提供施設」を作った名称は、厚生省が作ったもので、国の補助金をもらって法的施設にしなければならない。守らないと背信行為だと見做して県知事に抗議すると反発した。一時休会して、その後天野知事に抗議文書を郵送し、又地元新聞に投函して大きく載せられた。

 そこから大きな転換があったと言ってもいいかと思うが、県が慌てて知事指示で、今まで県の出された案をなくす条件で話し合い再開を受け入れて、ろう協会要望通り法的施設にして、運営主体を事業団にお願いする、 5人新規職員配置決定という計画に変えた。その後やっと設備内容、面積、配置等具体的話し合いになるようになった。

⑩『最終的決定内容に関して』

<設備配置について>

 県が作った配置図面通り、施設を設備するといわれたが、その機能により聴覚障害者施設としての効果はあるか、すこし不安がある。面積の問題ではない。つまり、限られた設備内容の中、社会問題に対応できる仕事があるかということです。

 長い山梨のろう運動を見ると、情報保障問題、人権問題、福祉問題の啓蒙などの社会的活動はなかなか出来ない状態が続いている。協会の法人化、県民への手話普及の社会的活動が見られるようになったが、協会の出来る活動ばかりでなく、少しでも情報提供施設を通して社会的問題に対応できる活動をやるべきと思っていた。

 ある理事の友人である一流の建築家に情穀提供施設図面を見せ、設備の意味を次のとおり細かく説明してくれた。

〇スタジオ室     スペースは最低40㎡が必要、この図面はOK。天井高さは4m必要で照明器具を吊る葡萄棚を設けたい。調整室を設けて、スタジオ室との間に大きい透明ガラスを差し込んで音の遮断を設けてほしい

〇制作室    スタジオ室の隣でなくてよいかと思う

〇試作室 天井高さは出来れば3m程度。あまり低くすると、人の影が出来て見づらくなる恐れがある。音響設計をしっかりとする。床の下に難聴者の補聴器向け磁気ループを設けたい。照明の明暗の調整が出来るような設備にしてほしい。

〇聴力検査室と相談室 合同にしないでそれぞれを切り離したらどうか。相談室のスペース12㎡は狭いで、18㎡必要。相談員、手話通訳者、訪問者6名入れるスペースが必要。相談室は出来れば明るい所にしてほしい。

〇発送室兼パソコンルーム 合同にしないで、それぞれ切り離したらどうか。パソコンは挨に弱く、湿度に関係があるので、発送室と兼用は良くない。発送室は事務室と近い位置にしたら便利です。パソコンルームは空調設備をしっかりとつけてほしい

<事業団について>

 県と話し合いによると、職員の任命権が事業団にあると県が言っているが、それは県の責任が免れることになる恐れがある。事業団は事実上、県の監督あるいは指導下にある。従って県に対する要望を事業団に反映させる責任はある。事業団の運営基準に書いてあるが、事業団が県の行政方針が影響を持たない単なる民間会社であれば、聴覚障害者情報提供施設を委託させるというならば、大変な問題になる。もしそうでしたらろう協会と県の話し合いも意味がなくなる。

 情報提供施設の人事は仏に魂を入れる必要がある。もしろう協会の意向が事業団に反映しなければ、協会と県の当初の意志疎通を欠いた関係で、同じ誤りを事業団との間に繰り返すことになる。県は協会の意向を速やかに事業団に反映するように指導するか、協会と県の話し合いに同席させ、その意向を応じ得させる必要がある。

<公募について>

 聴覚障害者情報提供施設は聴覚障害者を対象とした施設であるが、それに相応しい人材を採用するのは当然である。その人事によって施設の利用度に大きな差が生ずる。先進的な施設で、地元協会の意向を尊重した人事配置となり、その利用度も高く、逆の場合は利用しにくい施設となる。税金をより効果的に使うようにすることは行政の義務である。

 公募するとしても、一般的な採用条件を適用するだけでは施設運営に相応しくない人材をそろえることはできない。公募の条件について、事前に協会の合意を得るようにするべき。

 話し合いの中、「伝える」という言葉が目立ったような感じがある。県が協会の人事に関する要望を単に「伝える」ということであれば、協会としては、事業団と直接交渉により決める他ないと思う。「伝える」より「きめる」という言葉に変われば、県が責任を果たすという意味であれば納得する。

 ろうあ相談員については、手話指導が含まれるから、絶対的にろう者でなければならない。協会の要望の中、「移行させる」の文に対して県からクレームがあったが、それは適切な前歴換算を行い、事業団正職員として新たに採用することで、このままの人を移行させるという意味です。

 もうーつ、新たに県の正職員として採用し、聴覚障害者情報提供施設を勤務場所として出向させるということも「移行させる」の意味にある。現在県と事業団の区別がつかなかった現実があって「移行させる」という文を使うことは仕方がないと思う。

 派遣担当についてですが、手話通訳者として派遣されるのでなく、手話通訳者、登録手話通訳者、要約筆記者派遣、養成等の県全体の「総合的連絡・調整・統合センター機能」を使える。特に「面接」「通訳内容の把握」「事前調査及び情報提供と調整」「派遣通訳者の選定」「ケース管理」「研修の企画、実施」「聴覚障害者問題、通訳制度の広報・周知」「健康の管理」のコーディネート業務を慎重に置かなければならない。

<業務内容の手話通訳派遣関係について>

 県のいうコミュニケーション支援に属するが、「手話通訳者派遣」と「手話通訳派遣に関する連絡調整のコーディネートなどの事務を区別して両方を加える。手話通訳者として派遣されるだけでなく、手話通訳者・登録手話通訳者・要約筆記者派遣・養成などの県全体の「総合的連絡・調整・統合センター機能」を加える。

 つぎの連絡調整のコーディネートもやらなければならない。

 1-面接(管内聴覚障害者と通訳者の把握)2-通訳内容の把握 3-事前調査及び情報提供と調整 4-派遣通訳者の選定・依頼 5-通訳者への指導助言 6-ケース管理 7-研修の企画、実施 8-聴覚障害者問題、通訳制度の広報、周知 9-健康の管理

⑪ 『手話通訳の仕事は何だろう』

 手話通訳の仕事については、長い運動の経験から通訳身分保障についての課題を分かっていただきたいと思って県に訴えた。まず、手話通訳者の身分保障ですが、今は非常勤嘱託職員として働いている。月給賃金は10年前とあまりまだ変わらない12万円前後に、臨時賞与は年間にわずか1か月分しか貰えていない。

 なぜこのような不十分な身分保障で働かなければならなかつたのか、聴覚障害者の「聞こえない」「通じない」「話せない」「知らない」「出来ない」等の不利で問題になつた職業、家庭生活、社会生活等の苦しい実態を乗り越えて、通訳者から情報を与えて、なんとか解決出来た事例が少なくない現実がある。

 そのコミュニケーション手段のひとつに、手話があり、その提供をするのが手話通訳の役目である。山梨の手話通訳者は58人でいますが、家庭等都合で活動出来ない人を除くと、 40人の通訳者が活動しなければならない苦しい現状になっている。 手話通訳者のほとんどは、もともと手話サークル等ボランティア活動から生まれてきた背景があるが、前もっての手話依頼がなくても、突然近所の聴覚障害者の希望とか緊急の依頼で出掛けてしまう等ボランティア活動といえない現状が目立っている。

 手話通訳派遣事務所は県民会館にあるが、予算関係で2人を配置されている。予算は年間800件派遣費等計算されているが、実際の派遣数は県予算の800件を1200件以上に上っている。残り400件は手話通訳者の自費で派遣している。派遣費だけの問題でなく、手話通訳者の多忙で健康についての不安を持ちながら働いている人が少なくない。派遣の仕事だけでなく、その夜派遣内容を報告して、通訳の派遣、新しい言葉をどの手話にするか技術等検討する定例研修会に出なければならない、より多く聴覚障害者生活問題を把握するためのろう協行事に参加するか等で多忙な義務的行動が多い。 多忙だからわざわざ勉強しなくてもいいような単なる行動という考え方は出来ない。多くの聴覚障害者の依頼内容を細かく分析すると、教育、医療、労働、行政、文化等数えられない分野がある。 

 その基本的な知識も学ばなければ安心な手話通訳が出来なくなる。さらに突然依頼に「突然で受付けは駄目」も出来ない状態で、「待ったなし」の対応に強いられることで、自分の調整がつかなくなり、突然の対応に準備するなどが疲労の新しい始まりが出ることになる。また、ろう協の行事で休日出勤してもなかなか代休が出来なく、ずるずると仕事をしてしまうことが多い等、精神的肉体的な疲労がたまり、なかなかとれにくい等健康についての不安をもちながら働いている人が少なくない。自分の仕事が忙しくて、時間が欲しくて結局が同じじゃないか、通訳者と同じ身分だと文句をいう人がいるが、手話通訳者の場合は突然初めての内容が多くて、時間がないから明日延ばす内容でもない、突然対応に準備なしで精神的に細かい手話通訳をする等、初めて対決する場面が多い仕事であり、他にろうあ運動、手話サークル、全通研、手話講習会、ろう者の個人相談、ろう者の文章校正等の運動を担いながら働いでいる。家庭も洗濯も料理も子供育ても。つまりあまりにひどい労働実態である。

 手話通訳はボランティアの仕事ではない。福祉の仕事だという正しい概念を持たねばならない。そして聴覚障害者生活と権利の保障を拡大していくためには、身分保障、労働条件を改善する必要がある。手話通訳者が安心して働けるように公共機関の正しい整備を確立していくことが大事です。

 今度オープンする情報提供施設に置く手話通訳者配置等で、聴覚障害者福祉の拠点をさらに強化し、長年に解決出来なかった通訳身分を今度の情報提供施設の新しい職員として福祉施設に相応しい職場作りが必要になる。

 県が通訳者を置かなければならないことで、手話通訳試験、派遣を設けた。その後予算がないので暫く嘱託職員の身分で我慢して仕事をしなければならない現状を続けているが、手話通訳の仕事は精神的肉体的問題に影響が少ないから問題ないという概念を取り払って『無理に働け』の認識があるような気がする。

 私はろう協会の楽しい行事に参加して苦しめられたストレスを解放したり、手話通訳の問題と関係ない会議に出て交流しているが、その時間が通訳者の身分保障問題を延び延びになり解決出来なくなって困っている。聴覚障害者が育てた通訳者の問題を早く解決しなければならないとずっと思っている。その取組みはだれがやるのか、それは一番悩んでいるが、私はろう協運動を始めてから24年経ったが、こんな悩みはないでした。早く我々の仲間を多く作って聴覚障害者権利の守る通訳者を支援していきたいと願っていた。

⑫ 施設長について

 県職員退職者起用という県厚生部長の案を検討したが、聴覚障害者のための施設で、聴覚障害者また手話通訳のできる健聴者を採用するよう要望した。しかし、設備の話し合いが優先で保留した。12月3日県から突然県職員退職者起用という方針を決定された。最終的話し合いをーつもやってないのに、施設長県OB起用を決定されたことは納得できないことで事業団の話し合いができなかった。

 聴覚障害者のための施設ですので、専門的知識を持った施設長の必要性を説明した。聴覚障害者職員とコミュニケ問題、県OBがやると、他の職員並みの仕事が出来ない、手話が出来ないと残り4人の任務が重い。手話通訳が出来る人は聴覚障害者の実態を把握できるし、問題が出てもすぐ処理できる特性も説明した。

 事業団がろう協会の要望を受け、聴覚障害者問題を充分知る人を探す。普通の人を採用しない。国の運営費は安すぎるので、行政処理がうまい県OBを採用して今後の素晴らしい運営が出来る様にしたい。手話は勿論覚えさせると返事があった。でも、手話通訳が出来ない人と出来る人の心の出来はまったく違う。県OBにはいない。障害者基本法第19条に書いてあるが、福祉施設職員は専門的能力が必要と説明した。理解出来ない施設長と働くことは施設の機能低下に繋がると反論した。

 しかし、事業団が『ろう協会の要望通りにしたいならば受託を拒否する。今日天野知事一事業団理事長に説明して臨時理事会に受託承認をとるので、今夜までこのことについて回答が欲しい。回答が無ければ白紙にする。ろう協会の要望に適うように努力する。初めのオープンの時は力のある施設長が必要。今後の運営費を行政から貰えることは先決』受託拒否になる恐れが出たため、次の承認文書を送った。

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山梨県障害福祉課 課長補佐〇〇〇〇

               聴覚障害者情報提供施設 施設長について(回答)

 聴覚障害者情報提供施設の施設長選出については、社会福祉事業団受託条件である山梨県退職者起用を承知いたしました。なお、当協会の要望であります、施設長は聴覚障害者に対する理解を十分持たれ、聴覚障害者の実態を知り、判断できる方を採用して下さいますようご高配のほど心よりお願いいたします。以上

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 平成9年1月6日施設長は宮沢盛雄さんに決定された。宮沢さんは1986年開催の第22回全国身体障害者スポーツ大会担当課長でした。あの時から長く、ろう協役員と付き合っていただいた。聞こえない人に対して深く理解を持つ優しい宮沢さんです。決まる前、去年暮れ、私に電話があった。「私は手話ができないけど施設長になってもいいですか」と聞かれた。「いいえ、宮沢さんなら十分です。手話が出来なくても、理解は出来ている。ぜひなってください。」と答えた後、最終的に内定された。

⑬ 4月2日聴覚障害者情報センターオープン

 私、理事長が号泣しながら次の挨拶をした。

『山梨県立聴覚障害者情報センター開所にあたり、平日にもかかわらず、忙しい所にご出席を下さいました皆様に厚くお礼申し上げます。桜満開の下、素晴らしい聴覚障害者情報センターがオープンしましたことは私たち聴覚障害者としても大変嬉しく思います。

 この聴覚障害者情報センターは耳が聞こえない私たちのろう協会の長い要望でありましたが、それが、情報提供施設の組織的、機能的充実につながったと思います。この施設の建設運動は、県知事が山梨県障害者幸住条例を提言したときから本格的に始まりました。その時から情報提供施設にはどんな機能が必要か、どのような運営体制が必要か、行政と何回にも話し合われましたが、お互いの考えが折り合わず、長く平行線に辿っていたことがありました。しかし、お互いに話し合うことをあきらめずにきたことは幸いでありました。

 さて、現在、毎週県政番組に手話通訳が導入されています。聴覚障害者に手話で内容を伝えることは、活字や音声から情報を受け取りにくい私たちにとってありがたい事です。しかし、さらに私たちは教育、文化、医療等生活全般の情報も必要としています。その様な意味でも情報提供を保障する施設は絶対に必要なものです。

 長く私たちが求めていたのは、情報提供を更に拡大した情報保障の場であるということであります。行政とろう協会は、相互に信頼し連携し社会を形成していくパートナーであると思います。これからもこの関係を尊重し、聴覚障害者は勿論県民の財産となる聴覚障害者情報センターの更なる機能を充実に協力したいと思います。今回の完成は県職員の皆様が一丸となり、努力を重ねられていたことと思います。

 長い間、多くの皆様から暖かい応援を頂き、本当にありがとうございました』という挨拶でした。

⑭ 聴覚障害者情報センターの機能について

私たち山梨県聴覚障害者協会として、充分な情報保障が出来るように、次の機能を設けたいと申した。

 1  通訳派遣条件等の申請方法説明書作成 2  福祉機器展示  3  パソコン通信 4  上級講習生の養成用ビデオ制作 5  ワープロ講座、パソコン講座 6  情報誌展示 7  県内聴覚障害者把握データ作成 8  福祉制度に関する教養講座開催 9  聴覚障害者に関する法律調査10 火災対策に関する情報収集 11 県内字幕放送調査、字幕シンポジウム実施 12 幼児育成対策としてコミュニケーション方法情報提供 13 県内聴覚障害者職業調査 14 開発希望の福祉機器内容を開発メーカーに情報提供 15 医療制度情報提供 16 字幕放送使用の現況調査 17 通信リレーサービス新設 18 CS放送「通信衛星」使用(BS放送は放送衛星)19 上映会開設(新ビデオ発表等)20 FAX帳作成 21 企業研修会等研修情報提供 22 技術センター、訓練機関等と連帯を図って受託訓練の場を作る

⑮ 職員について

 平成9年1月中旬応募して2月4日の採用試験を経て決定された。長い運動の中で要望してきた次のろう協会の推薦で採用されますようお願いしたが、身分について残念ながらろう協会の要望通りでなく正職員3人、非職員2人という結果になった。

 正職員は施設長、事務職の通訳1人、ビデオ制作担当にすることになった。それだけはとてもがっかりしたが、長い間、通訳者に正職員身分が出来なかったと考えると、今回は大きな一歩である。

 ろうあ者相談担当は山梨で初めての設置です。これからの実績を積んで正職員への道につながりたいと思う。これで終りでなく、ろう協会が責任を持って非職員を見守りたいと決心した。

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             聴覚障害者情報提供施設職員について(お願い)

 山梨県聴覚障害者協会は情報提供施設職員に以下の者を推薦致します。ご高配の程宜しくお願い申し上げます。

  • 利根川まどか(手話通訳担当)  ・早川たまえ(手話通訳担当) ・山脇勝典(ビデオ制作担当)
  • 小沢恵美(ろうあ相談担当)

⑯ 職員業務内容について

 業務はどのようにするか、施設長と話し合って確認された。尚、もつと沢山の業務内容はあるが、基本的には次の通りです。

(施設長)情報提供施設総括・職員の服務に関すること・行政、関係団体との連絡調整・手話試験

(事務職一手話通訳)庶務、会計・文書事務・手話通訳者養成業務・ビデオライブラリー貸出補助

(ビデオ制作担当)ビデオ制作、管理業務・聴覚機器の貸出業務・字幕ビデオ映写会、各種教養講座・機器類の管理・ボランティアの育成

(事務職一手話通訳)手話通訳者派遣業務・業務(コーディネート)・要約奉仕員派遣・要約筆記奉仕員養成業務・ビデ

 オライブラリー貸出業務補助・来所者への手話通訳業務

(ろうあ相談員担当)相談業務・ビデオライブラリー貸出管理補助・ビデオ制作補助・各種教養講座補助

少ない職員数で沢山の業務に対応出来るかちょっと心配ですが、ろう協会の応援、アルバイト補助が必要です。

5-法的施設の意義

 厚生相援護施設担当に確認しましたら、情報提供施設は聴覚障害者の為の施設であり、長い間のろうあ運動の賜物であります。聴覚障害者一人に一人通訳者の派遣は無理です。だから情報提供施設が必要となります。視覚障害者の為には、以前よりライトハウス、点字図書館などあります。

 ろう協会が立派に運営していれば、法人取得ができます。このことについても情報提供施設の役割と言えます。情報提供施設は国際法、国内法でも、障害者が情報提供をアクセスするように定めています。使う当事者がいらないという結果を出せば建ちません。ただ10年20年と、全国都道府県の中でーつの県が建たなければ、国会議会が黙っていないことになります。なお情報提供施設は皆さんの税金で建てるので皆さんの声を聞く必要があります。

 ろう協会に話が無いということは力がないと見られてしまいます。ですから、国としても、力のない団体に情報提供施設を任すことは出来ません。

6-情報提供施設運動を見て

 聴覚障害者自身の合意がないと、全てを進められない時代になっている。しかし4年の話し合いの状況を考えるとの運動が大切な局面を迎えるとき、どの様な言葉で、どの様に伝えていくのかは大きな課題があったと思う。

 長い話し合いの中、法律に触れて話し合うことが多かった。やっぱり法というと、堅いイメージがあって慣れ親しむことができなかった。法のどこに面白い部分があるのか、それすらも全く見えない状況でした。でも法の網の目を潜って生きていくか大切です。

 厚生省通知障害者福祉法33条について考えて見ると、点字図書館の同じ33条文に聴覚障害者情報提供建設を加えるだけでした。 29年前から点字図書館建設が進められていたのに、なぜ同じ条文の聴覚障害者情報提供施設建設が出来なかった。つまり苦しんでいる聴覚障害者を軽く見ていたという意味となる。法律に関わる内容が多い。法律をしっかりと学ぶ必要がある。

 ろうあ者の要求がなかなか実現出来ないことは、ろうあ者が悲しむ問題ではない。行政側が真剣に耳を傾ける場面が少ないことです。真剣に耳を傾けてくれば、 4年の話し合いの必要がなかったと思う。

 苦しい運動の中、なぜか全日本が応援できないのか、少し不満があったが、その時、全日ろう連の高田理事長の話しによると「川べりまで馬を導いてくるのは全日ろう連の仕事。その後、川の水を飲むかどぅかは馬が判断する」と話しがあった。この言葉は、地元のろう協会の主体的な活動の重要性と、関係団体との連携の必要性を教えてくれた。

 今回は全通研と協力して一緒に活動してきたが、ろう協会の考え方を優先にして交渉してくれた。時々、なんで分からないのか、何をかんがえているのか、一時的に非難をうけたことがある。私たちの運動に多く課題があったが、いろいろな人の意見を聞くのが大事ですが、「文を読まない」「文章が書けない」「議論ができない」「イメージだけで判断する」「社会の動きに無関心」と感じる役員がいたら、「どの様に働き掛けていけばいいか」「どうしたらわかるようにするか」と細かく話し合って対応すべきです。「もう自分に手の打ちょうがない」と思う役員がいたが、自分に期待したような反応がなければ、自分のやり方に問題があると認めて、次の機会にはどうやってみようかと改めて勉強する反省が大切と思う。

 もし、自分はあの運動とは関係ないと思う会員もいるが、社会生活において実際に起こったことを対策の具体例を上げながら話せば納得できるはずです。聴覚障害者のほとんどが、社会的問題を乗り越える為、どんな展望を持てば良いのか、知りたがっている。幸せに暮らすことが出来る社会を作り出していくことが社会の発展ではないか。

 手話で知り合う程度でなく、聴覚障害者は何を考えているか、聴覚障害者のことを知ったという人達を本当の理解者に変えていく運動に変わる。これからもどんどん発展して、聴覚障害者の学習権、伝達権が保障されていくなら、どんなに素晴らしいことでしょうか。本当の豊かとは何か、生きがいとは何か、そして聴覚障害者の要求とは何か、もっと具体的に掘り起こして、共通の認識の下に未来を見つめて手をつなぎあうことはろうあ運動ではないかと思う。

7-ろうあ者相談員について(要望説明)

 国は身体障害者福祉法第12条の3により、身体障害者相談員は「都道府県は、身体に障害のある者の福祉の増進を図るため、身体に障害のある者の相談に応じ、及び身体に障害のある者の更生のために必要な援助を行うことを、社会的信望があり、かつ、身体に障害のある者の更生援護に熱意と見識を持っている者に委託することができる。」として、身体障害者相談員を都道府県及び指定都市に設置しました。 

この設置には経済の高度成長による障害者の雇用促進、核家族現象の顕在化、障害者間題の社会化等が背景にあります。

 相談員設置要綱(昭和42年8月1日社更240の1)身体障害者相談員は、ある者の福祉増進に熱意を有し、奉仕的に活動ができ、且つ、その地域の実情に精通している者であって、原則として身体障害者のうちから適当と認められる者を福祉事務所長が推薦するもの」となっています。その業務は設置要綱で以下のように規定しています。

 (1)身体障害者地域活動の中核体となり、その活動の推進を計ること。

 (2)身体に障害のある者の更生援護に関する相談に応じ、必要な指導を行なうこと。

 (3)身体に障害のある者の更生援護につき、関係機関の業務に協力すること。

 (4)身体に障害のある者に対する国民の認識と理解を深めるため、関係団体との連携を図って援護思想の普及に努めること。

 (5)その他前各号に附帯する業務を行なうこと。

 これらは純然たるケースワーク業務であります。しかし、その実態はケースワークの経験や社会福祉の資格も有していない主に地域の実情に精通している身体障害者団体の役員やそれに準じた人に委託している奉仕業務であり、委託された相談員は経験主義的に被相談者に助言したり、関係機関に紹介したりするだけで、相談に継続性がありません。

 元来、この制度は身体障害者福祉司やケースワーカーを補完するためのもので民生委員と同様に奉仕的な援挙の範囲に限度があると思われます。また規定しくいる業務の質の高さ、範囲の広さを考えるとそぐわない面も多くなってきています。しかしこの身体障害者相談員制度は相談員を通じて障害者の社会生活や職業生活等の様々な問題、特にコミュニケーシヨン間題や聴覚障害に起因する特性により派生する聴覚障害者問題の広さと深さを行政当局に認識させるために果たした役割はそれなりに認められます。

 しかし身体障害者相談員では解決しきれない問題を持った地域の聴覚障害者の話や、奉仕的な枠に収まりきれなくて本業や家庭生活に影響を受けた聴覚障害者担当等の話があり、ろうあ協会と結束して山梨県に対して身体障害者相談員とは別に専門のろうあ者相談員や手話通訳者を設置して欲しいという要求運動を昭和61年頃から始めました。

 今回情報提供施設の設置にあたり今までの要求を是非実現していただきたくお願いするものです。

 私共が今回のろうあ者相談員の設置にあたって考えている相談内容は以下の通りです。

①職業関連  ②福祉援護  ③公的機関の斡旋  ④生活関連  ⑤結婚関連  ⑥育児関連  ⑦手話指導関連

 まずそれぞれの相談内容について説明させて頂きたいと思います。

①職業関連 聴覚障害者が就職するにあたっての適性に関する相談や、就職の斡旋、実際に就職した後の様々な問題の相談などがあります。この様な相談を行うにあたっては、職業安定所と協力してことにあたっていく必要がありますが、現状の身体障害者相談員は自分も就業していることもあり、平日の日中には自分の仕事を休まなければなりません。また仮に休みを取って相談を行ったとしても、専門的な知識を必要とされることはいうまでもありません。

②福祉援護 年金、障害年金についての相談、日常生活用具に関する相談、更生医療の給付、一般医療、補聴器に関する相談等が考えられます。これらを見てもわかりますように、福祉に関する専門的な知識が必要になります。

 特に補聴器に関する相談は、様々な知識や経験が必要とされます。例えば補聴器は実際に装着する以前の様々な検査から、実際に装着した後の訓練がなくてはなかなか効果が上げられません。この様な専門的な相談内容は、身体障害者相談員のようなボランティア的な立場ではかなり難しいものです。

③公的機関の斡旋 これはりハビリテーション関係施設に関する相談、斡旋、公営住宅の入居に関する相談、老人ホーム入居に関する相談等です。これも常に新しい情報を集める必要もありますし、聴覚障害に起因した問題から施設等に入居した後も、様々な相談業務があります。

④生活関連 聴覚障害者の社会生活上の問題の相談、在宅福祉対策、人間関係におけるトラプルについての相談、税その他の減免等です。

⑤結婚関連 聴覚障害者の結婚に関する相談、県内外への縁談に関する相談、遺伝問題、結婚後の問題の相談、家庭での問題の相談等です。

⑥育児関連 聴覚障害者夫婦の育児に関する相談、教育についての悩みの相談、子供のある聴覚障害者夫婦の近所付き合いの悩みの相談等があります。また健聴者の子供が聴覚障害を持っていた場合、その相談を引き受けられる所が現在ではないと言ってもいい状態です。

⑦手話指導関連 聞こえる人に対する手話指導芳法についての相談、ろうあ問題についての啓蒙、手話講習会の運営方法や基本的な指針についての指導等があります。

 以上のように非常に多岐にわたった相談内容に対して、ボランティアとしての立場の身体障害者相談員では、内容的にあまりにも専門性を要求されているのではないかと思います。また上にも述べましたように身体障害者相談員の中には聴覚障害者は仕事を持ってぃる人が多く、相談したいと想う人がいても実際にはなかなか相談しにくいことがあります。

 また障害者基本法第19条においても「施設には必要な員数の専門的技術職員、教職員その他の専門的知識又は技能を有する職員が配置されなければならない」とあります。このろうあ者相談員は本人の意識は別としても制度的には行政サイドに位置していると思われます。

 相談業務を行う上で単なるボランティアとして外部に対して交渉を行うのと、行政サイドとしての身分を持った人が交渉を行うのとでは、相手の受けとめかたが違ってくることも考えられます。つまり純奉仕的な身体障害者相談員と違い、一定の給与を得て、明確に行政の一員として聴覚障害者の福祉に関わる問題に専門的に対応しているのがろうあ者相談員です。

 また、今までは手話通訳者が相談業務を兼任しているような面もありました。しかし手話通訳者であってもあくまでも通訳者であり、すべての通訳者が専門的な知識をもっているわけではありませんし、行政サイドに立っているわけでもありません。例えば公的機関のケースワーカーや相談員は処遇決定権を持ちますが、手話通訳者はこういうことはできません。しかし手話通訳者は単に機械的.にコミュニケーションが円滑に運ぶように協力する存在だけではありません。それは今日の山梨の聴覚障害者の社会状況や山梨の社会の実情を考えても、余りにも狭義的であると思います。通訳者には社会啓蒙、情報提供のような業務もあり、これはまた別の専門性を持ったと業務と考えます。

 最近、新聞やテレビにろうあ者、手話を学ぶ者、手話通訳者という言葉があちらこちらに出ています。又、聴覚障害者の社会進出が目立つ様になっています。こういう聴覚障害者を支援している関係者は多いのですが、特にコミュニケーションと情報の不十分さを補うために協力する、共同で聴覚障害者の社会的地位の向上のためのろうあ運動に取り組んでいるのが手話通訳者です。手話通訳者は、健聴者とのコミュニケーションで主体性、又は対等性を充分に維持出来ない聴覚障害者の耳代わり、口代わりとなって、コミユニケーシヨンど情報を保証するのが本来の役割であると考えています。

 しかし、山梨県が手話通訳者に聴覚障害者の相談業務を結果として兼務させているのが現状です。手話を主たるコミュニケーション手段としている聴覚障害者の相談は、単に情報の提供を手話通訳すれば可能なように思われる面がありますが、両親とも聞こえない障害を原因にして、育児上の問題、職場の無理解による人間関係の悪化、コミュニケーションの不充分による日常生活上のトラブル等、聴覚障害に関する問題を良く理解してないと思う通りの相談、援助出来なくなります。又、手話通訳制度が未だ充分に確立されていないこともあって、手話通訳者が聴覚障害者の相談員的役割を兼務しているような面もうかがえます。ろうあ者相談員は、依頼主に主体性があっても、相談の内容にまで立ち入って助言や援助をすることが可能な立場にありますが、手話通訳者は通訳している時、通訳者は言い換えたり、検閲する権利はありません。

 相談員は、自分の意見や助言を述べることが出来る、時には指導するので、精神的には比較的よい状態でいられると思われます。しかし、通訳者の場合、通訳している時、通訳内容にっいて自分の意見や判断を挟むことが出来ませんし、自分の意に反しているような内容でも感情を挟まずに通訳する必要があります。これは精神的な疲労を生じ易いと言われています。更に相談員は原則として被相談者を初めから終りまで担当しますが、通訳者の場合、職場、病院に同行するような時はともかく講義や講演の通訳は原則として15分〜20分交代でやる必要があります。そうでないと疲労して集中力が落ちてしまいます。このことを考えると、ろうあ者相談員は一人でも業務の処理が可能なこともありますが、手話通訳者は依頼内容によつては他の通訳者と一緒にやらないと業務遂行が困難になり、著しいハンディを負うことになります。しかし、このことは相談員よりは通訳者の方が困難な業務であることは意味しません。

 つまり、我々ろうあ協会は、手話通訳者はろうあ者相談と兼務すべきでない専門性のある業務であること、又ろうあ者の相談員においても専門性のある相談員を配置していただきたいと再度ご検討をお願いするものです。

8-ビデオ業務担当について(要望説明)

 今回情報提供施設の職員配置におきましてビデオ業務担当者を配署して頂くようにお願いして参りましたが、私共の要望をより一層ご理解頂くためにも改めてビデオ業務担当者の業務につきましてご説明したいと思います。

 私共はビデオ業務担当者の担当業務として以下のような業務を想定しております。

①企画  ②著作権交渉  ③取材  ④編集(手話通訳のワイプが挿入できるもの)⑤字幕作成  ⑥映写

これらの業務について具体的な内容を述べます。

①企画  ビデオライブラリー事業を行っていく上で、どの様な内容のビデオを揃えていくのかを考えなくてはありません。これは当然場当たり的に考えていくものではなく長期的な視野を持ったものでなくてはなりません。

その分野においても例えばニュース、教養、福祉、文化、スポーツ、手話の普及、聴覚障害者問題の啓蒙、聴覚障害者を理解してもらうものなどあらゆる分野が考えられます。これらの分野において聴覚障害者の二ーズを正しく把握した内容の企画をしていかなくてはなりません。

 聴覚障害者のニーズを把握するというのは、深くなくては出来ないものです。ですから民間の制作会社にビデオ制作を依頼したのでは、聴覚障害者の必要なビデオライブラリーが充実できるとは思えません。

②著作権交渉 自主制作ビデオであれば著作権に関する交渉はあまり必要ありませんが、テレビ放送の番組に字幕をっけたビデオを作る時には、著作権の許諾を得なくてはなりません。現在では著作権の交渉窓口が一本化されていないのが現状で、脚本家、制作会社、作曲家、作詞家などそれぞれに許諾を求めていかなくてはなりません。また字幕を入れることを考えた時、制作側の許諾が得られにくいということもよく聞かれます。字幕を入れることによって映像が変わってしまうことを嫌う人もいます。 この様なことを考えたとき、単にお願いすれば許諾がもらえるわけではありません。何度とない交渉を繰り返さなくてはならないことも予想されます。これらを考えればやはり専門の担当者が必要と思われます。

③取材 独自のビデオを作っていこうとした時に、当然色々なところへ行って取材する必要が出てきます。例えば山梨の手話を保存してぃくための取材、県民に聴覚障害を理解してもらうためのビデオ作製、公的な行事の取材など取材の必要性があります。この時カメラ操作以外は一般の人でも出来ますが、カメラ操作に関しては専門の人材が必要になってきます。

 ビデオライブラリーを充実させていくときに、その映像においても品質を維持する必要があります。今一四家庭ではVHS, 8mmVTRなど操作の簡単なカメラが広く普及してきましたが、これらの映像ばとても品質の低いものであり、マスターテープとしての品質を満足するものではありません。テレビ局等で使用されている様なカメラが必要になってきます。やはり一般の家庭で使用されるカメラとは違い、複雑な機能があり、これを扱うには専門の人材が必要になると思います。

④編集 取材されたものをそのままビデオにするわけにはいきませんから、当然編集作業が必要になってきます。字幕の挿入とも関係があることですが、聴覚障害者に喜んでもらう.情報提供を行おうとする時、編集のやりかたについても工夫が必要になってきます。手話通訳を入れるときの入れ方、その背景色、字幕の挿入方法など聴覚障害に対する理解がないとなかなか難しいと思われます。

⑤字幕作成 一般のテレビ放送や自主制作のビデオに字幕を挿入する場合、字幕の文章を作るところから始めなくてはならないこともあります。この時セりフの通り、ナレーション通りに字幕を作ったのでは聴覚障害者が理解できないこともあります。これは聴覚障害に起因した問題でありますが、文字を読むのに充分な学力を持たない聴覚障害者がいるためです。

 実際、高齢の聴覚障害者では義務教育を受けられなかった人がいます。聴覚障害者に対する義務教育が始まったのは昭和23年からです。この様な人たちに一般の人たちと同等に文章を読むことを強いるのは無理があります。当然他の聴覚障害者においても、複雑な文章になると意味が分からないという人もいます。この様な状況を理解した上で字幕を作らないと、あまり意味のないものになってしまいます。

⑥映写 当然ビデオライプラリーに来た人の中には、少し見てみてから借りる人もいるでしょうし、またある程度の規模のビデオ鑑賞会のようなものを行うことが考えられます。この時にビデオ機器の操作が必要になりますので、その担当者が必要となります。

 これらの業務を担当することを考えると、本来は一人ではとうてい出来るものではありません。すべての希望通りに要望を出すのであれば、もっとたくさんの人数が必要になると思われます。しかしまず一人から始めて実績を積んでいく必要があると思い、とりあえず一人の要望を出しました。上に述べたようにとても兼務できるような仕事量ではありません。またビデオ機器に対する専門的な知識を持った人材が必要ですし、さらに聴覚障害者に対する深い理解がなければ担当出来る仕事ではありません。しかしビデオ機器に対する専門的な知識が必要になりますが、特別な素質が必要になる訳ではなく、誰でもきちんとした教育、研修を受ければできるものです。

 現在県のお考えとして民間の制作会社にビデオ制作を委託するとのお話しがありましたが、今まヤ述べてきましたように、民間の制作会社では聴覚障害者に対する充分な理解があるとはとうてい考えられません。

このような方法でビデオ制作を行った場合、聴覚障害者が実際に必要としている情報提供ができなくなるのは明白です。制作委託費につきましてもかなり高価になると思われます。一番危倶しているのは単に他から借りてくるだけになったり、地域の聴覚障害者が本当に必要としている情報が提供できなくなることです。

 例えば来年の参議院選挙から政見放送に手話通訳をつけることが認められましたが、これは今後地方選挙にも拡大していくと思われます。地方選挙の政見放送に手話通訳をつけようとした時に、民間の制作会社にビデオ制作を委託していた場合、時間的にも制作出来ないことが予想されますし、他の県の施設から借りてこられる性質のものではありません

これでは参政権さえ脅かされることになりかねません。独自にビデオの制作を行っていれば、この様な場合にも対応することができます。これらの想定している業務は以上の理由から最低限必要な業務と考えます。

つきましては是非専門のビデオ担当職員を配置していただきたく再度ご検討をお願いするものです。